尿意地獄2 〜前立腺肥大の診断と自己導尿〜
救急車の隊員さんには、立ち会える人間はいない、と伝えた。家庭内で孤立している俺は、戸籍上繋がっているだけの同居の女房を朝4:30に叩き起こすことはできなかった。
しかしながら救急車の音と玄関ドアの開け閉めの音で女房は起きてきてしまった。
事情を説明したら、救急車に同乗はせずに車を出して湾岸の病院に迎えに来てくれるという。
有難いことだと思った。数々の非道な所業にもかかわらずそんな対応をしてくれるなんて。
処置が終わった病院の待合室で、会計を待っていると、女房が到着した。
車の中で何週間かぶりに会話らしい会話をした。
優しさが身にしみる。
独り身ならばこのインターにほど近い病院からタクシーで帰らなければならなかった。
何よりも、この痛さや爽快さを語ることができなかっただろう。
素直に感謝している。
救急隊員の方、医師、看護師の方にも大変にお世話になった。自力でどうすることもできなくなる無力感の前に、この国の緊急医療体制は素晴らしいものだと再認識した。
重ね重ね、税金を払っていてよかったと思う。
さて、時計を見たら6:30くらいだったか。
一睡もできない身体に鞭打ってとりあえず会社に休む旨のメールを入れる。
打ち合わせが5本とか入ってたけど全部他人に任せる。
こんな日に這って会社に行ってもしょうがないんだから。
家に戻ると、安堵の気持ちからかぐっすりと寝てしまった。
9時、10時、11時と断続的に目が覚め、その度にトイレに行ったが、絶望することになる。
おしっこが出ないのである。
昨夜の症状と全く同じ。
正確には、チョロっ、チョロっと申し訳程度には出るものの半端ない残尿感。
管を一発通したくらいでは尿道を取り囲むように鎮座する前立腺はこたえないらしい。
病院は15時から。
水を飲むのも極力控えているので喉がカラカラだ。
女房が、ここいいわよ、と紹介してくれた新興住宅地の小さな泌尿器科。地元の病院事情には疎いので助かる。手術とか必要なら中央病院的なところがいいんじゃないのかな…と思ったがその懸念は払拭される。
いつものチャリ移動は自重し、バスで。
バスの間中も尿意が襲ってくる。
ようやくたどり着いた終点から、トイレを探して駅前のショッピングセンターへ。
間一髪で漏らさずに済んだ。
なまじ、昨夜よりは尿が出るようになったのでかなり危うい状態が続く。
病院に行くと10人くらい待合室に人がいた。
産婦人科と内科と泌尿器科があるので患者層がバラエティに富んでいる。
妊婦定期検診に来ている夫婦、小さい子連れの主婦、老人、そして俺みたいな中年のおじさん。
長くなりそうなので次回へ続く。